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「いい音」の定義

外出自粛期間中はよくレコードを聴きました。
中には十年ぶりくらいで聴いて「おっ、けっこういいじゃん」と思うLPがあったり、「やっぱりこれはどうしようもないな」と再ガッカリするのがあったりでした。
で、自分なりに「いい音」の条件を考えてみました。どんなところに「いい」と感じて、どんなところを「ダメ」と思うのか、です。

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まず、「見通し」です。
前にどこかで書いたような気もしますが、いい音のLPは見通しがいいと思いました。
歌い手がいて声が聞こえて、伴奏がいて楽器の音があって、それでも歌と各楽器の
間がきちんと開いていて、音と音の間から先が見通せる(感じがする)のです。
言い換えれば、漆黒の空に浮かぶ満天の星―のような音です。

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そうあるためには、S/Nがよくないといけません(レコードのチリパチノイズのことではなく)。
そして見通しがよいためには、一般的に音数の少ないほうが有利です。
見通しを悪くするのがバイオリンとバックコーラスですね。
あれが入ってくると結果的に「無音」の状態がなくなるわけで、光害で星が見えづらくなった夜空のような気がするんです。
もちろん効果的なストリングスもコーラスもあるかと思いますが、どっちかというと美しい音を汚しているようにしか思えないことが多いです。
ジャズが好きになったのは、楽器が独立していて無音状態が多く、先が見通せる音質だったからかもしれません。

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一時期、ダイレクトカッティング盤やらデジタルレコーディングを売りにしたLPを買い求めましたが、スカが多かったです。
新しい方式で未熟だったからでしょうが、味気ない無味乾燥の音楽が詰まっていました。
音響メーカーに勤めていた方が某カートリッジを評価して「エアがある」と言いました。
エアとは「空気感」「会場の雰囲気」のことみたいです。ライブならライブの、スタジオならスタジオの雰囲気まで表現してくれると。

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出ハナのデジタル系録音は、このエアがまったく伝わってこないんです。完全にデッドニングされたような狭いスタジオで録ったんだろうなと思わせる音がします。
見通しのよさには、空気感の表現も含まれているような気がします。

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次に、周波数レンジの広さです。
やっぱり新しい録音では50Hz以下の音も入っていないと、迫力が感じられません。
1970~80年代の録音は、50Hz以下をスパッと切ったような録音もありますね。とくにポップス系。

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ドラムの音は昔とずいぶん変わりました。一番進歩したのではないかと思います。
昔は革(太鼓)か金属(シンバル)かの違いしか分からなかったのに、いまはバスドラの革の震える様子、シンバルやタムの位置まで分かりますもんね。

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ウッドベースの音にも変遷があります。1950~70年代はかなりいい線いってると思います。
モノラルレコードでも、聴いていてウキウキしてくるようなベースが入っています。
よくないのは80年代ですね。
どなたかが教えてくれました。内蔵ピックアップマイクで録るようになったからだと。
あの音は聴いていて少しも楽しくありません。エレベかな?と思うようなウッドベースもあります。

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いまはウッドベース1本にマイクを2本使って録るのが主流だそうです。音も格段に生々しくなりました。
私もタンノイ・アーデン使いの先輩もウッドベースの音が大好きです。
ウッドベースがきれいに聴こえないLPは聴かなくてもいいと思ってるくらいです。

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周波数レンジとともに、各楽器のささいな音までとらえる解像度も大事なんでしょうね。
音の良しあしはすべてレコーディングエンジニアの腕にかかっていると思います。

 ※文章の内容とレコードジャケットはそれほど関係ありません。


Commented by Ysan at 2020-11-07 09:46 x
どなたのコメントも無いので一言書かせていただきます。お気に召さない内容かもしれませんが・・・。
この分野で客観的な話をしようとすれば『Acoustical engineering』H.F.Olson 1957を無視することは出来ません(私はごく一部の拾い読みですが)。これで物理的な話のベースが出来ればあとは感覚の話になります。ただ感覚と言っても個人的なものだけでなく、その人の生まれ育った環境(文化)に大きく影響されます。
歴代の愛好家・エンジニアの選んだ音と自分の好きな音がどれくらい一致しているか知ろうと思ったら我が国の先達たち(池田圭、高城重躬、岡俊雄、五味康祐、etc.)の著作が参考になります。
Commented by tama_photo at 2020-11-07 16:36
> Ysanさん
昨日からSP-LE8Tを1ヵ月ぶりくらいで引っ張り出して、アンプクマモトで聴いています。
最初に音を出したとき、箱鳴りがものすごく耳ざわりでガッカリしたのですが、きょうはいい気分でオスカーピーターソンのハイレゾを聴いています。聴覚って慣れてくるものなんですね。
B&WのN-801はほんとうに優等生なスピーカーで、ジャズだろうが歌だろうがクラシックだろうが、なんのクセもなくサラッときれいな音楽に仕立ててくれます。このウッドベースをもう少し前に出してくれないかなと思うことはたまにありますが、LE8Tの得手不得手の度合いと比べたら、それこそかすかな弱点です。
クセのあるスピーカーには魅力的なものが多いのですが、ジャンルを選ばずきれいに再生してくれる801が、最近はありがたく思えるようになりました。
Commented by Ysan at 2020-11-07 16:56 x
tamaさん コメント有難うございます。実は前の投稿はあまりに偉そうなことを書きましたので消そうと思ったのですが、コメントをくださった後だったのでそのままにしました。

私は思うのですが、どの録音もその時代のトップエンジニアがその時代の最良の機材で創ったものです。ですから良い再生機器とはエンジニア(厳密にはプロデューサー)の音造りが聴き取れるものと思うのです。そんな理由でモニタースピーカーを使っているわけです。

また的外れな書き込みになりましたがどうぞ御容赦ください。m(__)m
Commented by tama_photo at 2020-11-07 18:40
> Y san さん
N-801もモニタースピーカーですよ。クラシック系のスタジオで使われていると聞きました。さもありなん、です。
新しい録音でも、粗末な音質のCDがあります。こういう場合、販売会社にクレームを入れるべきでしょうね。改善してもらわないと、アーティストもかわいそうです。
Commented by k100 at 2020-11-08 01:45 x
最近、歌が上手いという島津亜矢のCDを買ってみました。確かにテレビで見るとなかなか感心するのですがCDを聴くとテレビの方が良い気がします。
物理的にはオーディオで聴く方が良いに決まってますが映像がある無しではなくCDの録音技術が悪いと思います。
島津亜矢はレコード会社を変わるかどうかした方がもっと良い録音技術者に出会えると思うのですが残念です。
ソフトによって30年前でも感動できる音源と最新でも逆に聴くに耐えない物があるのは残念ながら事実ですね。
唯一、「木蘭の涙」は良いです!
Commented by misasagi4 at 2020-11-08 03:13 x
tama_photoさん、こちらで接着の報告します。
針の折れた103で、固化時の収縮で断線しないか?絶縁不良にならないか?などを確認して
手を震わせながら接着しました。
最近は10分程度で十分に硬化する商品があるので重宝します。
これでサイドから触れても安心な状態になりました。
音は、裸にした延長でカブリが更に取れ、
仰るところの「見通し」が良くなりました。(劇的にではありませんが)
最大の収穫は、佐藤陽子が弾くバイオリン名器「SUN RISE」の音色に惚れ直しました。
明日、よく聴く曲をiTunesに落として以前録音したものと比較試聴する予定です。
ツヤツヤな音で録音したいので先ほどまで12枚ほど超音波で洗っていました。
Commented by tama_photo at 2020-11-08 08:31
> k100さん
島津亜矢はカミさんが何度か一緒に仕事をしたそうで、とにかく歌がうまくて控室での対応なども心遣いがすばらしく、その人柄を大絶賛していました。いい曲に巡り会って大ヒットを飛ばしてもらいたいですね。
これまでに買ってガッカリしたのは、ちあきなおみのLPと、いきものがかりのCDです。ちあきなおみのときはタンテやカートリッジが昔のもので、そのよさを引き出せなかったのかもしれませんが、重量盤の限定品で期待が大きかったせいか、ほめられた音質ではありませんでした。
数日前からオスカーピーターソンの「プレイズ・カウントベイシー」のハイレゾを聴いています。1955年のモノラル録音ですが、いきものがかりより音が新鮮です。
Commented by tama_photo at 2020-11-08 08:37
> misasagi4さん
やっちゃいましたかー。( ̄∀ ̄;)
まぁ、転ばぬ先のなんとやらで、音質も向上したなら言うことなしですね。
カートリッジは落ち着いていますがお金がたまったら買いたいものはあります。それはフェアチャイルドのモノラルとシュアーV15III。
フェアチャイルドは高いです。V15IIIは昔使っていたので買い戻し。それもなんだかくやしくて、じっとしています。
Commented by k5 at 2020-11-08 18:58 x
こんばんは。
いい音の「定義」、カッコの位置を違えています。
それは、人それぞれで、十人十色でしょう。
よく言われるのが「原音再生」ですが、サントリーホールと武道館の音では違う訳ですし、何をもって原音というかも曖昧です。
まあ、tamaさんもその辺は承知の上で記事をアップされたと思います。
Commented by tama_photo at 2020-11-08 21:31
> k5さん
オーディオフェアには行かないし、地方都市熊本ではそんないい音が聴ける場所がないんです。だから家で聴いていて自分とこの音のレベルはどれくらいなんだろうかと不安になることもあります。
原音再生には、音質はもちろん、音量も大事だと思っています。生の音に近い音量。そうなると挑戦できる原音の種類は本当に限られてしまいますね。うちはギターアンサンブルくらいか・・・。
Commented by tama_photo at 2020-11-09 21:48
すみません。コメントをひとつ削除しました。 m(_ _)m
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by tama_photo | 2020-11-02 16:48 | Music & Audio | Comments(11)

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